12月24日 待降節第四主日 ルカ1章26節~38節 フィアット・この身になりますように

 

今年は主の降誕が月曜日なので、待降節第四主日と主の降誕夜半のミサ(クリスマスイブ)が同じ日になります。ですから、朝が第四主日、夜が主の降誕と典礼が異なるミサが行われます。

 

教会では第四主日に受胎告知の福音を読みます。その日の晩には降誕が祝われるのでちょっと違和感がありますが、暦の関係で仕方ないことです。朝と夜で心を切り替えてミサにあずかりましょう。

天使ガブリエルはマリアに受胎を告げます。時代考証に忠実な聖家族を描いた映画「マリア」では、ガブリエルがヒゲ面のおっさんだったのには度肝を抜かれました。たしかに天使は男性または中性とされているのでそうなのかもしれませんが、幼稚園の聖劇ではたいがい女の子がガブリエルを演じているので余計にそう感じるのかもしれません。

天使は「おめでとう、恵まれた方」とあいさつします。天使祝詞(アヴェマリアの祈り)では「マリア」と名前が入っていますが本文にはありません。アヴェはマリアの名字と思われているかもしれません。実際、阿部マリアさんや安部まりあさんもいらっしゃいます。クリスチャンでなくても、あべさんならつけたくなる名前ですね。「アヴェ」は「おめでとう」と訳されていますが、本来は「喜びなさい」という意味だそうです。

たしかに神の母となる役割を与えられたのですから、喜ぶべきめでたいことには違いありません。しかしマリアはほんとうにそんなことができるのだろうか、と考えたのは自然な気持ちだったことでしょう。聖霊によって身ごもるとはいえ、世間的には未婚の母となることを受け入れなければなりません。お告げを受け入れるには勇気が必要でした。けれどもマリアは神が与えられた使命を受け入れ、「この身になりますように」と答えます。

「なりますように」はラテン語で「fiat=フィアット」という言葉です。これは神の思いを全面的に受け入れるという言葉です。イタリアに「フィアット」という車があるのでさすがカトリックの国と感心していたら、「トリノのイタリア自動車工場」の頭文字だそうです。なーんだ。ま、両方かけているのかもしれませんが。ちなみに英語では「let it be」。そう、ビートルズのあの名曲は讃美歌でもあったのです。

 

マリアが受け入れたのは神に対する信頼があったからでした。「わたしがやります」という自信に満ちた思いであったというより、「神さまがなんとかしてくださるから大丈夫」という気持ちが強かったのではないでしょうか。聖書に記述は少ないですが、わたしは自然体で子育てをしておられたのだと思います。

マリアでなくても親となる人は「ちゃんと子育てができるだろうか」と心配することもあるでしょう。「ちゃんと生きていけるだろうか」と思うこともあるかもしれません。でも大丈夫。「フィアット」の気持ちがあれば、神が助けてくださいます。 (柳本神父)