6月25日 年間第12主日 マタイ10章26節~33節  弱さを知っておられるからゆだねられる

 

先週の福音でイエスは弟子たちを派遣されました。続いて彼らに迫害があることも告げられます。しかし、その迫害を恐れることはない、と励まされる内容となっています。

ルカ福音書の12章にも同じ内容が出てきますが、そちらはファリサイ人に対する警戒という文脈の中で語られています。いずれにしても弟子たちに対する迫害は、イエスが天に帰られてからの宣教のときに起きているので、今日の福音も派遣にあたっての戒めというよりも、聖霊降臨後の宣教の際に起こる迫害について語られていると考えられます。

 

イエスは弟子たちに、迫害する人々を「恐れるな」と言われます。そして「恐れるなら魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方(神)を恐れなさい」と言われ、続いて雀と髪の毛の話のあと「恐れるな」と言われます。「恐れるのか恐れないのかどっちやねん!」と言いたくなりますよね。「髪の毛の数まで知っておられるように、神は人の罪もすべてご存知なのだ。だから神から罰されないように悪いことを避けてよいことをしなさい」と言われているようにも思えますね。

わたしたちが人を恐れる理由の一つが、自分の弱点を知られてしまうことです。そこを突かれると手も足も出ません。怪獣映画やモンスター映画で「怪獣○○の弱点がわかりました!」「よし、そこを集中攻撃だ!」などという場面がありますね。また、真面目そうな顔をしていても裏では自堕落な生活をしていることを知られたくない、と思うこともあるでしょう。しかし、味方が自分の弱点をよく理解してくれているときは安心です。優れた監督は選手の弱点をよく知っていて、それを補うためにはどうしたらいいか、チームプレーの組み立てをどうすればよいかを的確に判断します。それで選手は安心してプレーできるのです。

神さまも同じです。わたしたちの弱いところを知っていてくださるからこそ、安心して身をゆだねることができます。神がすべてをご存知だということは、わたしたちを裁くためではなく、守るためなのです。

 

今日のたとえに出てくる雀はいけにえや食用に用いられていました。二羽まとめて売られるくらい価値が低いもの、ということです。雀と言えば子どものころ、伏見稲荷の門前で雀の焼き鳥が売られていたのを思いだしますが、今でも売られているようです。こちらは一羽600円と、結構なお値段ですが…。

そのように取るに足りない雀にさえ、神はいのちを与えられ、見守っておられるということです。ルカ福音書の「空の鳥を見なさい」という教えとも共通しています。そして、ひとり子を送ってくださるほど人類を愛してくださっている神が、わたしの欠点も弱点もすべて知って導いてくださいます。これほど心強いことはありません。  (柳本神父)